2019/01/06

コースガイド⑤ 琵琶湖第1疏水 第2トンネル東口~蹴上インクライン

📗 琵琶湖疏水ウォーキングコースとは

🏃第2トンネル東口

「第2トンネル東口」から「第2トンネル西口」へ向かうには、住宅街を抜けます。コースを道なりに進むと逆U字型の車止めがあり、舗装道に出ます。そこで右に曲がり、少し歩いて坂道を下り始めると右手に逆U字型の車止めがあります。そこを右に曲がると、「第2トンネル西口」はすぐです。



🏃第2トンネル西口

第2トンネル西口」は、坂道の下りの途中から見る形になるので、角度があって少し見え難いです。レンガ造りの美しいデザインの「第2トンネル西口」洞門の扁額には、「西郷従道(さいごうじゅうどう)」筆の「隨山到水源(やまにしたがいすいげんにいたる)」という文字が刻まれています。

西郷従道は、西郷隆盛の弟で、西南戦争では隆盛側につかず、明治政府で要職を歴任しました。内閣総理大臣の候補に再三推されたが、西南戦争で賊軍の将となった兄を理由に断り続けたそうです。扁額の「隨山到水源」は、「山にそって行くと水源にたどりつく」という意味だそうです。(出典:京都市水道局ホームページ)



「第2トンネル西口」の前は、公園になっています。背の高いフェンスがあるので、「第2トンネル西口」の写真を正面から撮影するのは難しいです。ここも紅葉がきれいなポイントです。



🏃日本最初の鉄筋コンクリート橋

「第2トンネル西口」からすぐに「日本最初の鉄筋コンクリート橋(第11号橋)」に着きます。明治36年(1903年)に造られた橋長7.2m、幅員1.5m、メラン式(米蘭式)の小さな鉄筋コンクリート橋で、国の史跡に指定されています。

第11号橋(下の写真)は、田邊朔郎が当時の最新工法だった鉄筋コンクリートを試したもので、その経験をもとに本格的な鉄筋コンクリート橋である「黒岩橋(第10号橋)」を建設しました。100年以上経った現在も現役です。


対岸の施設は、京都市上下水道局の新山科浄水場日ノ岡取水池です。ここでは、琵琶湖疎水から原水(水道水の原料となる水)を取り入れて、砂のような浮遊物を沈め、藻や木片のような大きなゴミを機械で取り除いています。そして、導水トンネルを通して約4km先にある新山科浄水場に原水を送っています。(出典:京都市水道局ホームページ)



🏃第3トンネル東口

「日本最初の鉄筋コンクリート橋」からは、「第3トンネル東口」が見えます。「第3トンネル東口」洞門の扁額には、内閣総理大臣を2度務めた「松方正義」筆の「過雨看松色(かうしょうしょくをみる)」という文字が刻まれています。「過雨看松色」は、「時雨が過ぎるといちだんと鮮やかな松の緑をみることができる」という意味だそうです。(出典:京都市水道局ホームページ)



「第3トンネル東口」で疎水沿いを歩くウォーキングコースは、実質的に終わりです。ここから「蹴上インクライン」までは大きく迂回しなければなりません。ここでドロップアウトする場合は、京都市営地下鉄(東西線)の「御陵駅(みささぎえき)」までは、徒歩約10分です。

「蹴上インクライン」に行くには、南へ道なりに坂道を下り、三条通(府道143号線)に出ます。三条通を蹴上方面にしばらく進むと、左側に日本初の急速ろ過式浄水場として明治45年(1912年)に設置された蹴上浄水場のレンガ造の建物が見えてきます。ほどなく日向大神宮の「一の鳥居」に着くので、そこで右に曲がり石畳の坂道を進みます。すぐに「蹴上インクライン」の上流にかかる「大神宮橋」に着きます。



🏃第3トンネル西口(大神宮橋)

「大神宮橋」からは、少し遠いですが「第3トンネル西口」が見えます。第1疏水と第2疏水が合流する地点でもあります。「第3トンネル西口」の扁額には、「三条實美」筆の「美哉山河(うるわしきかなさんが)」という文字が刻まれています。「美哉山河」は、「なんと美しい山河であることよ」という意味だそうです。(出典:京都市水道局ホームページ)

下の写真では、工事中ですが、「第3トンネル西口」の手前右側には、赤レンガ造りの旧九条山浄水場のポンプ室があります。旧九条山浄水場ポンプ室は、明治45年に完成したネオ・ルネサンス様式の建物で、帝国京都博物館(現在の京都国立博物館)や東宮御所(現在の迎賓館赤坂離宮)の設計者である片山東熊山本直三郎が設計しました。建物の中には、京都御所の防火用に敷設された御所水道に疎水の水を送るためのポンプが設置されていました。



🏃蹴上インクライン

橋の反対側は、「蹴上インクライン」です。インクラインとは、標高差の大きい二つの水路の間の輸送を容易にするために、傾斜面にレールを敷き、動力で台車を動かして船・貨物を運ぶ装置です。(出典:デジタル大辞泉、百科事典マイペディア)




「蹴上インクライン」は、高低差のある蹴上と南禅寺の船溜まりを結ぶ傾斜地に線路を敷き、船を線路上の台車に載せて運行した傾斜鉄道の跡です。明治23年(1890年)に完成し、翌年から大津と京都を結ぶ舟運ルートとして利用していた時に使われていました。

舟運の衰退もあり、インクラインの運転は、昭和23年(1948年)に休止されました。その後、昭和48年(1973年)にレールは撤去されましたが、昭和52年(1977年)に復元されています。台車には、30石船が乗せられて、往時の姿が再現されています。平成8年には、南禅寺水路閣などと共に国の史跡に指定されています。



「蹴上インクライン」の長さは581.8mで、建設当時は世界最長の傾斜鉄道でした。4本のレールが敷設された複線方式となっています。舟を乗せた台車は、蹴上船溜まりと南禅寺船溜まりの間の約36mもの急勾配を上下していました。

インクライン下部の南禅寺船溜まりでは、白川と合流し、その先は「鴨東運河(おうとううんが)」と呼ばれます。動物園、京都市美術館、平安神宮の大鳥居などに沿って西に流れ、夷川船溜まりを経て鴨川に流れ込みます。大津から鴨川合流点までが完成したのは明治23年3月で、明治18年6月の琵琶湖疏水起工から約5年の歳月を要しました。



琵琶湖ウォーキングコースの紹介は、以上となります。このコースを歩けば、明治の人々に歓喜と驚きをもたらした夢の大事業を肌で感じていただけます。自信をもっておすすめできるコースですので、ぜひ歩いてみてください。それでは、気を付けて行ってらっしゃいませ。

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